2017年世界選手権台北大会振り返り②現地での生活~主に食事~
前項で述べたように、今期の世界戦はグリーンワールドホテルにて開催された。ホテルは以下。
私が泊まった部屋はこちら。(恐らく問題はないと思いますが、駄目なようなら削除します。)
このホテルは日本からの観光での宿泊場所としてはかなり有名らしい。日本人スタッフがいたし、連珠関係以外でも日本人観光客が多かった。連珠の海外遠征としては私にとって初の、トイレにウォッシュレットが付いていたのが最も良い。世界選手権期間のおよそ二週間をここで過ごしたが、具体的な大会内容に移ると連珠以外のことを書かなくなる気がするので、おおよそどういった生活がなされたかを触れておく。
基本的な流れは
①朝食(ホテル内のバイキング)
②対局
③昼食(台湾側が手配)
④対局
⑤夕食(台湾側が手配)
⑥自由時間(買い出し、検討、入浴、睡眠など)
である。
この中で予選二日目のみ三局あった。
食事について。
バイキングはどれも日本人の口に合うもので、全体的に美味しかった。唯一辛いのは、メニューが毎日一緒ということだろうか。日によって食べるものを変えるのはどうやら日本人の習慣らしい。ある日の朝食は以下。
奥にあるスープ的な何かを最初は直接飲んでいて、味濃いスープですね~と話していた。数日して台湾の人に聞いてみるとどうやら御飯にかけて食べるものらしい。そりゃ濃いわけですね・・・。
昼食と夕食。
主催側が出前を頼んでいるようだった。昼食では毎回「ピザ?パスタ?ライス?」
と三択で尋ねられる。中身は何かと尋ねてもよく分からないので私は一巡した。以下がピザの写真。
これが一人分である。ピザ好きの私としては最初はよかったがボリュームがありすぎて途中から心が折れてきた。ただ結局中村さん以外は皆大会を通してほぼ完食だったように思う。体重は怖くて確認していない。
夕食は「チキン?ポーク?フィッシュ?」の三択だった。途中から神谷君がポークが美味しいという定石を確立したのでそればかりになったと記憶している。お弁当で、こんな感じ。
美味しかった。味付けは濃いめ。台湾的な甘辛さがあった。
買い出しはホテルから徒歩5分くらいのところにセブンイレブンがあり、水分や糖分の調達はここで行なった。日本のセブンイレブンでは見たことがなかったが、カフェスペースがあり広かった。
これから連珠のことについてたくさん書いていくが、その合間合間にこうした生活がなされている。
2017年世界選手権台北大会振り返り①台湾について
台湾についての必要なことまとめ
ご存じの方もいると思うが、2017年8月に連珠世界選手権台北大会に参加した。その振り返りをかねて、本稿ではその1として台湾に行く上で抑えたほうがいいことを私なりに記していく。なおここに記すことは台北近辺についての私の感想だ。
お金的なこと
①往復
日本ー台湾というのは思いのほか安く、時期を外して本気を出せば2万を切るようだ。一般的には4ー5万と見るのが無難か。もしかすると国内旅行で遠出するよりも安いかもしれない。以下に適当にグーグルで調べた画像を貼るのでそれを参考にしてほしい。
②食費
コンビニ(セブンイレブン)で売っているものの値段は体感的には日本と大差なかった。台湾の飲食店や市場は全体的には安いと思う。日本の2/3くらいかな?
③宿泊費
安く済ませようと思えばどこまででも安くなるようだが、世界選手権で利用したグリーンワールドホテルについては2人で泊まり一泊あたり4500円弱だった。次項以降で述べるが快適である。
食べ物
①味
食べ物は全体的に美味しい。日本人の口に合うと思う。台湾の料理は香辛料が本当に多く、辛いものと香辛料独特の香りが苦手な人は辛いかもしれない。特に麻婆豆腐は花椒という舌が痺れる香辛料が多かった。個人的なお勧めは小籠包とパイナップルケーキ。
パイナップルケーキは台湾では定番のお土産らしくChiateというお店がとても有名だそうだ。
また日本のセブンイレブン(もしかしたら他のコンビニも?)が進出している。現地のものが最悪口に合わなくても、食べる物には困らないだろう。海外あるあるの水の入手もここでできる。現地のコンビニ弁当も美味しかった。
②衛生面
日本には三秒ルールというものが存在するが、台湾ではあまりおすすめしない。日本ほどは衛生面は良くなく、油断するとすぐにお腹を壊す(というより壊した。)除菌ティッシュを持ち歩いて損はない。
治安
治安は良いと感じた。念のため夜の一人歩きや、人通りの少ないところに行くのはオススメしないが、基本的には安全だと思う。
言葉
台湾では中国語が話される。私の中国語能力はあまり高くないのでよく分からないのだが、以前習ったことのある先生によると普通語(標準語)に近いらしい。若い人相手なら英語も結構通じる。大会会場には日本語スタッフも居た。
バリアフリー関連
これは本当に個人的な事情だが書いておく。台北近辺に関しては、バリアフリーは大丈夫そう。道はところどころ苦戦するが、概ね良好。特に駅については日本より使いやすいかもしれない。
気を付けること
①空気
空気は日本のほうが綺麗だと思う。呼吸器に問題のある人はマスク必須。(私は喘息持ち)喉もやられやすいのでイソジンも欲しい。
②火蟻
日本に進出してきて一時期ニュースになった火蟻だが、台湾では猛威を振るっている。蟻自体が多いので噛まれないように気を付けるべし。
③狂犬病
台湾は最近イタチアナグマの狂犬病感染が確認され、完全な清浄国ではなくなった。リードに繋がれていない犬が道を歩いていることもある。比較的安全だとは思うが、うかつには触れないほうがいいだろう。
これで台湾については一通りまとめた。次回から大会内容を振り返っていく。
02/06出題 問2ー解答①(方針とヒント)
白先、受けの正着は?
問2は問1における正解の場所に黒から先着した場合の受けを問うた。連珠は自分が攻める→相手が受ける(急所)の場合、急所に攻め側から先着するのが好手になることが多い。実戦でも問1→問2という思考プロセスは自然である。
実はこの問題における白のまともな受けはAとBしかない。結論を先に言えばAが正着。Bだと負けてしまう。例を挙げよう。
(変化図、黒7まで)
黒には図に示すような詰み筋があり、これを受けるのはほぼABの二択なのだ。厳密に言えば一応受けになっている箇所はあるが、どれも簡単なのでここでは割愛する。
(途中図、白2まで)
というわけで問2は事実上白2に対する黒勝ちの模索となる。この局面では盤上この一手という妙手が存在する。一旦時間を置くのでもう一度考えてほしい。
02/06出題 問1ー解答②(白の異着ー白D,E)
白先、受けの正着は?
(問題図)
前回記事の続き、白D、E点について見ていく。
白2ーD点における黒勝ち
(正解図、黒13まで)
白2ーCと違い、今回は一路空間が開いているためいわゆるH型の詰みが可能になる。黒3は相変わらずの急所で白4は絶対。以下はよくある詰み筋だ。図以下はA,Bの四追いである。黒5ではここ以外でも色々詰むので、興味があれば検討してほしい。
白2ーE点における黒勝ち
(正解図、黒5まで)
ここでも隙間を利用した攻め筋がある。黒3のヒキは相変わらず急所。これを4と受けると黒5で終わっている。以下Aの四三ないしBCの四追いだ。
(正解図2、黒7まで)
白4には黒5とノビてから7とフクむのが一つの形。このフクミは頻繁に登場するので覚えてほしい。四追いの一例はABCDでノリ切りである。
黒は剣先三本+連一本が詰みに加担している。一般的に三本以上の連剣先が攻撃に参加するとほぼ受からない。
(正解図3、黒11まで)
白8が一応最強っぽい抵抗だが、これでもさほど難しくない。黒9と一度ミセ手を打ってから11と三をヒケば両側に勝ちが残る。以下はAの四三ないしBCの四追いだ。他にも色々変化はあるが、どれも難しくはないので研究してほしい。
ここまでで、問1の解説を終わる。次の記事からは問2の解説に行くとしよう。
02/06出題 問1ー解答①(白の異着ー白B,C)
白先、受けの正着は?
(問題図)
この図に於いての白の正着を問うた。結論からいえば白の正着はA。他の受けは全て負けてしまう。本当に全ての場所を検討すると、時間がいくらあってもたりないので、白の受けB~Eについて解説する。その他の受けについては各自研究してほしい。本稿では白B、白Cに対しての黒勝ちを見ていく。
白2ーB点における黒勝ち
(失敗図、白10まで)
まずは失敗図。単純に打っていく筋は黒9まで四三を打った時に白10が飛び四となり失敗する。そのまま黒で棒四を打ってしまい、白に五連を作られてしまうケースがよくあるのではないだろうか。要注意だ。正解を見よう。
(正解図、黒5まで)
実はこの白2の場合、数あるまともそうに見える受けの中では恐らく最速で黒が勝つ。黒3と飛び、黒5が手筋の両ミセ。以下AまたはBで四三勝ちだ。ミセ手で行くのがポイントだ。ノリ手解消にはミセ手。是非覚えてほしい。
白2ーC点における黒勝ち
(途中図、黒3まで)
白2はT字型における急所の場所で、ここにすぐ目が行くのも好感覚。ただこの場合は黒に良い手段がある。
黒3が肝要。この手に対し白4ーAでは以下黒BCDの四追い勝ちがある。よって白4ではBに受けるしかない。「三は引いたほうに止めよ」という格言があるが、裏を返せば「引いた方に止められない三は好手」である。白4ーB以下をさらに見ていく。
(失敗図、白12まで)
黒5以下バリバリ引いていくのは、もっと空間が広ければ有効な手段ではある。この場合攻め切るスペースが足りずに頓挫してしまう。空間が狭い場合には、無駄な石をなるべく省略する繊細な打ちまわしが要求される。
(正解図2、黒9まで)
ここでも黒5とミセ手から行くのが解決策。失敗図へ合流させたいなら白6だが、今度は黒9まで簡単な四三勝ちがある。
(失敗図2、白10まで)
よって白は6と受ける。今度こそ黒7からバリバリ引くのはやはりだめで、横が長連筋になってしまう。上辺の盤端も近いのでこれは勝てない。
(途中図2、黒7まで)
そこで黒7のミセ手がまたも妙手。こうした長連が絡む形ではミセ手がよく用いられる。以下白Aなら黒BやCに打つ予知が残り、白Bなら黒Dと飛ぶ選択肢を残すことができる。白8以下の詰み方は幅広そうだが、本稿では一例を示しておく。
(正解図3、黒15まで)
白8に対しては色々な詰みがあるが、最も分かりやすいのは全部引いてしまうことだろう。図以下Aで四三勝ちだ。
(正解図4、黒13まで)
白8が最強。まだ油断ならない。詰み方は一つではないだろうが、ともかく黒9が急所のフクミだろう。これは以下ABCの四追いを残している。白10以外の場所では、たとえ四追いでなくてもこの筋で負けてしまう。今度は黒11とこちら側に道が開け、13までDないしEの両ミセ。ようやくゴールだ。
次項に続く。
初見と既知ー連珠の構図の研究
初見には弱い
友人による私の評価の一つに「(一般と比べて)初見には滅法弱いが、二回目以降には強い、だから経験値を積むことが何より大切。」というものがある。この指摘が客観的に正しいかどうかは別として、長年私を見てきた人による評価であるので大事にしている。
連珠の公式戦でいうと、去年の珠王戦がソーソロフ8ルールの初採用大会だった。私の性質上こういう意味での本当の初回は大体酷く、実際に結果としては2勝2敗2分で12位くらいだった記憶がある。ただ私としてはこういう機会はチャンスであると考えていた。特に今回のルール変更は全員にとって初見であり、大きな失敗を遠慮なくしやすい。この黎明期に守りに入り、周囲の研究や考え方が確立してからそれに参入しようとすると、5年や10年といった長期視野において圧倒的に勝てなくなるだろうという予感もあった。実際にこの敗北での知見は後の大会において大きく活かされている。某氏に「珠王戦5割だった人間がその年のAT(世界選手権決勝)に出て名人戦リーグを優勝するんだからねぇ・・・。」と言われたが、私の認識としては逆で、あの敗北があったから今に繋がっているという気持ちが大きい。特にATの悲惨な内容については色々思うところがあり、技術的にいくらか向上したのではと感じる。
名人戦第二局の話
(名人戦挑戦手合い第二局途中図、白22まで)
対局後しばらくして解説動画を見たのだが、白18、20はチャレンジングでありこれは黒勝ちになるだろうという旨の解説がされていた。
私の当時の形勢判断は「白が最善の受けをしていけば恐らくいい勝負」くらいのものだった。
この局面を少し見てみよう。まず手番、つまり主導権は黒にある。盤上最もスペースの広い左辺に先着でき、連と剣先を同時に作ることのできる好点がわかりやすく存在する。これだけをみれば確かに黒が勝ちそうだ。
一方で白の視点からこの局面を見てみると、直近でAやBといった分かりやすい好点、黒から見れば負担がある。上辺の剣先が下辺の黒斜め連を間接的に止めており、下辺の剣先二本は動きやすい。下辺側の戦いに持ち込めれば充分に受けは見込めそうだ。
双方の主張をまとめると、「黒の明確な攻勢+手番VS白番+相手の大きな負担」となる。最近の連珠はこの構図を取ることが珍しくなく、私自身これがどうなるかというのは自分で考えたりソフトに打たせたりでかなり研究はしていた。当時の結論は「いい勝負」であった。この局面自体は初めて打ったが、この構図については深い研究があった。これは初見なのか、既知なのか?
受けという観点から見てみる。連珠の受けではよくある展開が2~3ある。この局面は典型的なカウンターアタックの形である。連珠の受けを主体とする展開の中では個人的に最も得意だと考えているパターンなのでそれなりに自信はあった。基本方針は「黒の攻めをぎりぎりのところでいなして手番を持ってAやBに打ち込む」となる。あとはこの方針をどこまで通せるかにかかっているが、本譜は理想的な形で白Bと打てたのが幸いした。
現代連珠は局面の数が膨大となっている。個々の形を研究しても全てを記憶することは不可能であるため、こうした構図の研究の重要性が増すだろうと考えている。
形勢判断の尺度
元々は
ここ最近物事をすぐ忘れることに気づいた。連珠の棋譜という話になると顕著で、次の日には忘却していることが多い。日々あれを文章化しようこれを文章化しようと考えていることは多々あるが、その大部分を忘却してしまっているのではなかろうか。あんまり忘れても困るのでせめて思いついて間もないうちにここに書いておこう。
元々は連珠の抽象的な概念について何か書きたいと思ったのが始まり。当初思い描いたのは、形勢判断だとか攻めとか受けとか方針の立て方といった、抽象的なものの中でも本当に抽象的な内容だった。現状出回っている連珠の資料を見渡すと、例えば詰め連珠は正確な答えがある。定石本については「次の手はこう打つ」と書いてあるものの、その思想やロジックには触れないものが大部分といった印象である。考え方についてはあまり重要視されてこなかったせいか、形になっているものはほとんど存在しない。
というわけで何かをというわけだが、難しすぎるものについてはそれを作る土壌ができていない。「超基礎的ではないが難しすぎないもの」ということで形勢判断を取り上げよう。
連珠の勝利条件
ところで連珠の勝利条件に目を通したことがある方はどれくらいいるだろうか?
例えば連珠ルールブック(http://rulebook.kyogo.org/index.html)
には次のように記載されている。
「黒が先手、白が後手で交互に打ち、縦、横、斜めのいずれかに早く「五連」を並べた方が勝ちです。」
全ての資料に目を通したわけではないが、言葉選びは多少異なるにせよ、いずれのものでもこの旨は記載されているだろう。この文章から、連珠の形勢判断に必要な二つの要素を読み取ることができる。
連珠の形勢判断の尺度ー速度ー
先の文をもう一度。
「黒が先手、白が後手で交互に打ち、縦、横、斜めのいずれかに早く「五連」を並べた方が勝ちです。」
「早く」五連を作るとある。当たり前のことだが、相手が五連を作ってから自分が五連を作っても勝ちにはならないということだ。攻めの速度が形勢判断の尺度の一つということになる。
もう一つ注意しておきたいのは「相手より早く」ということだ。連珠における攻めの速度は絶対的なものではなく相対的な概念なので、相手の状態によって自分のどの攻めが速いのか遅いのかが変わってくる。
この尺度をもう少し掘り下げると、「連珠において速いというのはそもそもどういうことか」「速くするにはどうすればいいのか」といった疑問が出てくる。率直にいうと、文章化すると非常に長くなるのでとりあえず置いておいて次に行く。
連珠の形勢判断の尺度ー空間ー
「黒が先手、白が後手で交互に打ち、縦、横、斜めのいずれかに早く「五連」を並べた方が勝ちです。」
今回は五連にアンダーラインを引いた。なぜかお分かりだろうか?
その前に、そもそも盤上に五連だけが並んだ状態をまじまじと見たことがあるだろうか。最初に見てみよう。
これが五連だ。端的に言って、結構なスペースを必要とする。
攻めの速度は相対的という話もこれに関連する。相手の五連を作るスペースを消してしまえば、そもそも速さは関係なくなる。同じように、自分のスペースを消されれば相手だけにチャンスが残るので不利ということになる。
空間の広さは速度とは異なりある程度は絶対的な概念である。「五連を作るのに充分なスペース」というのは決まっているからだ。こちらももう少し掘り下げると、先と同じような疑問が出てくるだろうが、とりあえずここでは深くは扱わない。「なんとなく広そう、狭そう」でもそれなりに機能するので意識してみてほしい。
とりあえず形勢判断の最も基礎的なことについて書いてみたが、続くかどうかは気分次第・・・。