連珠雑記

連珠(競技五目並べ)に関する雑記。問題掲載、五目クエストの棋譜、公式戦振り返りなど。

棋譜並べ② 梅凡VS姚宇杰

 

今年の4月、中国で全国五子棋団体賽という大会が開催された。この大会のルールは題数指定打ちで、現行の世界選手権採用ルールである四珠交替打ちのひとつ前のものだ。とはいえ、参考になる棋譜が多いのでしばらくこの大会の棋譜を並べていこうと思う。

 

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(第1図、黒5まで 黒:梅凡 白:姚宇杰)

 

局面は丘月からのスタート。丘月は四珠交替打ちでほぼ唯一確実に旧型に誘導できる珠型としてかなり脚光を浴びているため、この戦型の理解を深めておくことは大事になる。黒の梅凡は昨年の世界選手権ATにも出場した強豪で、中国のトッププレイヤーの一人。周到な序盤研究と卓越した受けの技術が印象深い。対する姚宇杰は国際的には無名だが、棋譜を見ている限りでは受け棋風のようだ。この大会に出場している時点で強いことには違いない。

黒5は何十年も前から打たれている形で、未だ結論が出ていない。こういう形は連珠では珍しい。数多の新定石が生まれる中、現代の研究スピードではその寿命は数時間とも一日とも言われる。この形については持久戦調、急戦調、ハメ手調とそれぞれの分岐について変化が富んでおり、どうとでも打ちやすい。長い歴史がある分経験値や事前の研究量も大事だが、当人の大局観が重要になりやすいため、特に力戦調を得意とするプレイヤーに重宝される。この作戦を採用した梅凡に関しては、特に黒番を持つときには何かしらの準備があることが多い。

白6では早くも分岐がある。最も多いのはAで、この手は最善とされている。Bは初見ではここに打ちたくなる方が多いように思うが、黒有利が定説となっている。白C~Fはハメ手調で、以下極めて難解ながらも黒勝ちになるとされている。トップレベルでは通用しないが、練習対局や短い時間の公式戦で採用するのは戦術としては有効だろう。

 

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(第2図、白10まで)

黒7はAが最多。この7も一つの選択肢だが、これは一般的には白打ちやすいと見られているようだ。黒7で8に打った対局も大会中にあるので、後日並べていく。白8は必然で黒9がまた珍しい。最近の流行りでは黒9はBがよく試みられていて、この9は黒打ちにくいということで下火になっていた。つまりこの時点で黒には何かしらの準備があることが確定したといっていい。当然の10に対して、黒はどう出るか。

 

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(第3図、黒15まで)

黒11~15まで研究を披露した。元々黒11では13が多かったが、それに対し白Gという進行を梅凡は好んで打っている。具体的な善悪は分からないが、その進行は白有利ということなのだろう。黒を持ったときの対策が本譜というわけだ。この進行は短期決戦を睨んでいる。直接的には黒ABCの四三勝ちがあり、上辺での黒模様が強力だ。白は打つ手が制限されている。黒の連を白DやEから解消していくのか、あるいは多少怖いが白Fとしておいてこの連を反撃にとっておくのか。本譜を追ってみよう。

 

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(第4図、黒21まで)

白16~18という手を選択した。これは部分的には最も堅く見える手で、このあたり棋風が表れたか。相手の研究を警戒したというのもあるだろう。黒19は11との連携が良い手で、自軍の受けの役割も果たしながら相手の受けを難しくした。白20はこのパターンにおける急所の位置で、類型でもここが最善となることが多い。黒21と平凡に叩いて分かりやすく受け無しになった。なお白20でAには黒Bが手筋の寄せだ。白20では駄目かもしれなくてもCとヒキ、黒Dを強制してから受けにいったほうが紛れがあったと思う。

 

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(第5図、黒25にて白投了)

白は24と慌ててヒイたが、25がフクミとなって時すでに遅し。以下はABCの四追いとDEFの四三勝ちがあり、同時に受ける手段がない。投了もやむなしだろう。

振り返って白は、16で17と三をヒキ乗り込んでいくか、23で反発を狙うかを選ぶ必要があったのかもしれない。

 

新手を出すと研究している側はかなり勝ちやすいのに対し、受ける側は初見で対応策を考えなければならない。そのためこうした大差になることが珍しくない。この大会中まだいくつか黒15までの進行があるのでまた追っていこう。