連珠雑記

連珠(競技五目並べ)に関する雑記。問題掲載、五目クエストの棋譜、公式戦振り返りなど。

Gomocupの感想 〜これからどう在るべきか〜

連珠でGomocupという大会があった。連珠ソフト同士の大会での優勝を競うものだ。いま話題となっているところでいえば、コンピューター将棋選手権のようなものだ。今年はそれまで五年連続優勝だったYixinを破り、embyro19というソフトが優勝した。詳細は知らないのだが、このソフトはチェコの少年プログラマーが作ったものらしい。世の中の進歩というのはすごい。

既にソフトが公開されたということもあって実際に使ってみた。強い。感触としてはYixinとは結構違う。一番最初に自分に湧き上がってきた感情は漠然としているものの強烈な不安だった。

話しは少し変わって、Renju Offlineというサイトがある。これは対局サイトなのだが、一般的に想像されるそれとは少し違う。持ち時間が数カ月とあり、継盤検討、ソフト検討が自由にできる。本来は時間の合わない人同士が対局を組むために作られたシステムだが、いまでは専ら連珠解明を目指す場となっている。初心者に近い人からトッププレイヤーに至るまでこのサイトで打ったり見たりしており、いまでは最新研究の動向をチェックするのに欠かせない。

yixin2017のGUI版がリリースされてから、そのソフトを完全にコピーして打つ人が急増した。めちゃくちゃ強い手を自動で導き出してくれる。それまではソフト有りとはいえ、勝率を上げるにはパソコンに張り付いてひたすら自分でポチポチ検討するのが必須だった。yixinが出てからはソフトを付けっぱなしで外出なり就寝なりして、しばらくすると強い手がでてくる。あとはそれを着手すればいいだけになった。こうしたことが成立するのは、持ち時間が長く継盤可能な環境であっても、yixinがそれを凌駕する手を頻繁に導出することが理由にある。人によっては、ソフトは連珠を極めた、終わったという声も現れた。しかしembyroが登場し状況は変わるだろう。embyroはyixinとはだいぶ違う手を打ちながらyixinより強い。みんなそれに改めて追従していくことだろう。

ここに不安を持った。それまで大して疑いもしなかった価値観が一瞬にして塗り替えられること。だからといって、どうせすぐ変わるのだからと投げ出していては時代に置いていかれること。追従する中で、流されずにもがきながら何が自分の目指すもの信じることを見つける必要があること。

これは何も連珠だけに限った話ではなく、普段の在り方でもそうだろう。連珠は完全情報ゲームゆえ、時間をかければいつかは答えが見つかるが、人生はそうはいかない。もがき続けなければならない。そうして何かを発見できるのか。できたところでどうなるのか、そういう不安だった。

私は昔から何かを盲信しやすい性格であることを自覚している。それが容易に裏切られることも何度もあった。それでも何かを信じたいと思ってしまうのは、もがくことに恐怖があるからかもしれない。盲信して、追従するほうが楽だからだ。こうした話しは恐らく既に別の分野でも出ているのではないかと思うが、連珠という自分が本格的に携わっている分野で表れたことで、実感を伴った焦りと不安が出てきた。とはいえもがくしかない。諦めて止まってしまうのは危ない兆候だというのは、連珠の前例を見ているだけでも感じる。わかりやすく淘汰されていくからだ。なんとか生きていきたい、やっていけるかなぁ。