連珠雑記

連珠(競技五目並べ)に関する雑記。問題掲載、五目クエストの棋譜、公式戦振り返りなど。

チャンク化

チャンク化とはどういうふうにしているかを聞かれることが増えたので、最近友人に説明した例を書いておく。

 


f:id:haisarenjuthink:20190413121909j:image

図が基本図。ここからの黒の追い詰めを考える。

 


f:id:haisarenjuthink:20190413122005j:image

いきなり躓くようで申し訳ないが、便宜上白2は中止めで進める。外止めをすると、一般的にはそれだけで詰まなくなることが多い。ただ実戦では圧倒的に中止めのケースが多数なので、それを軸に考える。

黒3以下は、存在する三と四を全て打っていくとこうなるというものだ。実際に並べるともっとわかりやすいが、黒の四三に白の四がノリ勝つことができない。この図から得られる知見は、黒はミセ手ないしフクミ手を使用する必要があるか、またはそもそも詰まない可能性があるということだ。

 


f:id:haisarenjuthink:20190413122626j:image

黒7とフクミ手を打つ発想はよく登場する。白は普通に受けると簡単に負けてしまうが、この手が盤上唯一の受けになる。黒の四追いはノリで受かり、別の四三も同時に受けている格好だ。

 


f:id:haisarenjuthink:20190413122923j:image

調べていくとわかるが、黒7とミセ手を打つのがこの局面唯一の詰み筋。以下は全ての四と三を売っていくと勝ちになる。

基本図は強い人が見ると恐らく余裕の黒勝ちに見えることが多いと思う。しかしその直感に反して、意外と詰み筋が限定されているのだ。この図では7のミセ手に8で先手で受けられるなにかがあっただけで勝ちが消滅する。

 


f:id:haisarenjuthink:20190413123333j:image

白石を一つ多くした。この場所に白石が入っている形も実戦では多い。これだけで黒勝ちが消滅する。

 


f:id:haisarenjuthink:20190413123625j:image

黒7に白8が先手となる。黒の詰み筋は黒7しかないため、詰みがないことが確定する。

 

ここまでをまとめると

①基本図白2中止めのとき、四と三を全て打っていくとノリ手で不詰

②黒7フクミ手は白に絶対肪あり、不詰。

③黒7ミセ手以下追い詰め有り。

ということになる。実戦では基本図から別の石が色々足し引きされていることが多いので上記の条件と照らし合わせて検討する。実戦例を見てみよう。

 


f:id:haisarenjuthink:20190413124306j:image

図は先日の東京オープンの中村戦で白が私。黒21と突きだした局面だ。

上辺だけを見ると冒頭の基本図と似た形になっている。白Dと叩けばほぼ同じだ。条件を確認しよう。

黒A白B黒C以下、黒が例のミセ手を打ったときに白が四と先手で返せる。よってこの筋は基本的に詰まない。加えて、この図は白20でこの詰み筋における黒の剣先をあらかじめ止めているので、詰み以外でも負ける可能性が大幅に減っている。私はこのとき30秒連珠だったが、以上の思考から白Dを自信を持ってノータイムで打つことができた。冒頭の検討がなければ上記の詰みの有無の探索に神経を使い、変な手を打って悪くする可能性もあっただろう。

このように、頻出型を研究しておくと実戦での判断に役立つことが非常に多い。こういうのは自由打ちの必勝定石に特にたくさんある。私が自由打ちの研究をある程度強くなってから推奨するのはこのためだ。