連珠雑記

連珠(競技五目並べ)に関する雑記。問題掲載、五目クエストの棋譜、公式戦振り返りなど。

速度の見極め

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図は明星の古くから存在する序盤。白6ではAが定石とされている。この局面で黒にAと打たれると、縦、横、斜めで合計三つの連が発生してしまう。無論詰みを残しているため、これだけでいきなり受け無しになる。連珠は一般的に二つの連が出来た時に追い詰めが発生するため、いきなり相手に三つの連を作られると負けになりやすい。自分の手番で受けることのできる相手の連は通常一つであり、残り二つが野放しになってしまうからだ。白6をAに打つのは、局面の急所に先着しながら自らも連を補充する攻防手で、自然な着想といえる。

ところで、この局面を見た時に次のように考える人は多いのではなかろうか。

「確かに黒Aは打たれると困るが、今は白の手番なので白から先にBと強襲を仕掛ければ良い。」

 

この考え方もまた棋理に適っている。但しそれだけで局面判断を下すと低くない確率で痛い目を見る。以下の手順を追ってみよう。

 

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黒7で連を作り返されたが、まだ大丈夫。白8はもちろん先手だし、黒9に対して白10で黒の連を完全に消去した。白のほうはABCなど攻めの手段に困らない。なんだ、こんな簡単に白が勝つのか。わざわざ最初の図で受けに行く必要などなかった。そう思ってフワフワしていると次の手で現実に帰されることになる。

 

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黒11。以下ABの四追いフクミである。白石は全く下辺の受けに効いていないのでもちろん受からない。実戦では黒9となった瞬間にあっと気づき、白Aと受けに行く人が多いと思うが、それも時すでに遅し。黒C以下一手一手だ。

ここにおいて黒は、冒頭で白が採用した考え方「相手に良い手があってもこちらから先に攻めることができれば関係ない」を用いている。最初は白が速かったように見えたのに、終わってみると黒のほうが速くなっている。こういうことは連珠にはよくある。速度の善し悪しを判断するには「ひとしきり斬り合った後にどちらが主導権を握っているか」が大事になる。そんな先まで読めないという場合は、やはり冒頭で示したような攻防手でじっくりと戦うのが無難だろう。