連珠雑記

連珠(競技五目並べ)に関する雑記。問題掲載、五目クエストの棋譜、公式戦振り返りなど。

共通型の基礎知識

Twitterのぴえこ先生のお題局面で登場したので、ちょうどいい機会ということで書いてみる。この記事で説明するのは、当該戦型における前提知識、つまりプレイヤー間で常識とされているものについてである。細かい手順や最新の動向は追わないので、そこが気になる方はこの記事を読む意味はないだろう。

 

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テーマ図

黒5は連珠では長らく埋もれてきた手である。私が連珠を始めた07年当時からしばらくの間、この形は白有利(もしくは白勝ち)ですよと言われてきた。まずは基本的な手順から。

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基本図

黒11までがこの形における基本図。ここまでの進行はお互いに変化したほうが明確に悪くなると言われている。連珠の傾向として最初の最初から手の広い局面が訪れるのは稀だ。多くはこの局面のように最初の10手ー20手でお互いの連剣先を相殺し合った結果として手の広い局面が現れる。事前研究の段階では、何よりもまず「手の広い局面が訪れるまで」を押さえておくのが望ましい。白12では現在では様々な手が打たれている。

 

白良しと言われた従来の進行

従来白良しと言われていた進行を紹介する。

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白12、14とシンプルに連と剣先を蓄えておいて、黒15には白18までで黒に打つ手なし、というのが私がこの形を初めて勉強したときの常識だった。しかしなんとこの局面は黒に追い詰めがあるのだ。この追い詰めの発見によって、この戦型は爆発的に流行することになった。

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黒19と打ってから21が妙フクミで白に受けがない。全変化を載せるのは大変なので以下は各自検討してほしい。連珠ではこの局面のように「難解な、あるいは長手数の追い詰めが存在しながらそれが長い間誰からも発見されなかった」ということがちらほらある。ソフト検討全盛のこの時代においても時々そういうものが登場する。連珠は詰みが難しいゲームと言われる所以だろう。

この戦型の実質的な第一号となった汪ー小山戦(下記URL)は上図において「白16を中止めするとどうなるのか」という連珠だ。発想としては自然である。この形の登場以後しばらくは白16までを起点としたものが多い。

http://www.renju.net/media/games.php?gameid=61874

 

様々な形から登場する

基本図11までの手順は現在のソーソロフ8ルールにおいて様々な珠型から登場する。この形は実際には盤端関係によって三種類の異なった戦型として登場するので紹介する。

 

①雨月盤端

基本図のこと。合流型が最も多くこの形のベーシック。雨月、松月、山月、丘月、残月から合流可能性あり。

 

②残月盤端

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残月盤端

残月からは雨月盤端にも戻せるが、残月盤端と言及した場合は通常この局面を指す。雨月盤端と比較すると上辺が狭く、左辺と下辺が広い。

 

③雲月盤端

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雲月盤端

雲月、水月から生じる。雨月盤端との比較では右辺が狭い。

 

どの盤端を選ぶのがいいのか

明確な結論は出ていない。ただ、③の雲月盤端だけは成立しないとみられている。というのはこの形の発端となった黒追い詰めが成立しないからだ。

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黒21によってできる横の連が盤端に引っかかるため次に三を引けなくなっている。これにより黒の追い詰めが存在しない。

 

なお、この形の最初期に右辺が狭いことを利用して黒9を12に打つのも試みられたが、その局自体が白快勝であること、以後試す人がいないことから有力ではないのだろう。(下記URL)

http://www.renju.net/media/games.php?gameid=61861

黒と白どちらが有利なのか

明確な結論は出ていない。連珠の戦型の寿命というのは年々短くなっており、新しく発見されてから表舞台に現れて一局だけで姿を消す、あるいは水面下の研究で済まされてしまい現れることすらないということも珍しくない。傾向として言えるのはみな残月盤端を有力視しているらしいということで、雨月盤端の登場は減少している。初めて登場した2015年当時と比較すると、いまこの戦型を見ることはかなり少なくなった。それでも大きな大会でちらほら採用されているため、この戦型自体が駄目になったというわけではなさそうだ。単純にソーソロフ8ルールが採用されたことで局面の数が膨大になり、他にやりたい局面があるということなのだろう。