連珠雑記

連珠(競技五目並べ)に関する雑記。問題掲載、五目クエストの棋譜、公式戦振り返りなど。

研究テーマという口実

テーマを持った研究ーある局面Aを解明するー

仰々しく書いたが、私はこういうのが好きではない。なぜか?忘れるからである。「~の研究をしよう!」というのは言葉それ自体に義務感、強制力があって深いところで積極的ではない(気がする)。それよりは、半ば仕方なく始めた研究から派生、悪く言えば脱線した内容、「お、これ面白い」と感じたことを突き詰めていくほうが記憶に残りやすい。中村名人(日本で連珠の一番強い人)は最近、「いやー、三歩歩くと忘れちゃうんですよ♪」が口癖だが、中村さんの場合は冗談としても私は笑えないところがある。ほとんどの研究や棋譜並べは一週間覚えていれば上出来だ。先のリーグでも、「こんなことならもっと調べておけばよかった」と、研究済みだったはずの局面を泣きそうになりながら長考した。

 

朝の答え

今朝の問題(https://twitter.com/haisarenju/status/915321322011484160)は、こうした研究から派生したものである。元の局面Aから考えれば、A’’’’くらいまでには変化していそうではあるが。

さて、この形自体は実戦でもよく見かけるが、出題の都合上で作為に満ちている。具体的に見ていこう。

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初型から、黒1~9までの手順を想起した方は強い。追い手の連続で、部分的には受け無しである。並みの形であれば追い詰めと言っていい。しかしこれには落とし穴がある。

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この図には白18まで、白に作ったような四追いがある。作ったのだから当たり前ではある。つまり追い詰め以外の勝ち方を求めているわけだ。このことは出題時「黒先、追い詰め勝ちは?」ではなく「黒先、どう勝ちますか?」としたことにも表れている。暗に追い詰めはないと言っている。こうしたアプローチは本来あるべき姿ではないため、どうにか悟られない出題方法を考えねばなるまい。

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というわけで、黒1と呼珠から打つのが正解手。これで受け無しである。黒にはAB、CBという二通りの四三勝ちがあり、白はこれらを同時に受けなければならない。

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黒AB、黒CBという勝ち筋の説明で、Bが二回登場した。ならば白Bと受けるのが合理的な発想である。だがこれには黒1~9まで、すんなりと勝ちが実現する。白には大した受けがない。

 

出題図A’

元々は以下のような形から出題するつもりだった。

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これでも真ん中に三を引けば合流するのだが、これには問題がある。

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黒1が常套手段のミセ手。対して白のまともな受けは2くらいしかないが、黒の追い詰めになる。

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黒5が要所で、これで明快。以下白Dには黒BCと引いて以下EFGの四追い。白Aなら黒Hと三を引いて黒Eが四三となる。

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というわけで白4だが、これには黒7まで決めてしまって以下追い詰めだ。この図はさらに改造を施し、上級詰め連珠第125問として出題した。他にも詰み筋自体はあるが、ここでは割愛する。

 

元々は一つのテーマを持った研究だったが、派生に派生を重ねて色々な図が出現する。こういうのが連珠の魅力であり、研究の楽しさだと思う。今ではクリックを何回かすれば元々が何だったのかも思い出せるので便利になった。興味があれば是非やってみてほしい。