追い詰めの研究
研究とは
連珠において研究というと、「実戦で現れ得る、ある局面における最善手を探し出す」という意味合いで使われることが多いと思う。「私は研究量が多い」=「より多くの局面における最善手を知っている」と理解しても差し支えない。
私は研究が好きだ。ただここに述べた研究とは意味合いが異なる。もっと全体的な、連珠で普遍的に通用する法則を探すことが好きということである。具体的に例を出そう。
詰みの形
次の局面を見てほしい。黒先で追い詰めだ。
初心者や級位の方には難しいかもしれない。強い人は分かると思うが、この局面はいわゆる「何でも詰み」というやつだ。
黒7まで打って、次が白Aなら黒BC、白Dが恐らく最長だが、それでも黒FGHの四追い勝ちとなる。このように、三や四をただ打っていくだけの詰みは「ヒキ詰め」「イモ筋」などと呼ばれる。イモ筋の詰みは追い詰めの中では確実で、簡単と認知されている。
これでも勝ちは勝ちだが、もっと筋の良い勝ち方があるので紹介しよう。
黒1とフクミ手から入るのが「筋の良い」とされる手段である。「筋の良い」とは何か。連珠ではなんとなく使われている単語であり、辞書的な定義があるかは私は分からないが、私なりの解釈として「ある局面やその類似局面で汎用性の高い」とさせてほしい。この黒1から始まる打ち出しは似たような局面でもしばしば活躍する。それについては後述する。
この黒1に対して白はどう受けても次に三を打って四追いとなる。手数から見てもスマートだ。
ここまでイモ筋と筋の良い勝ち方を紹介したが、実はこの局面自体の勝ち方は沢山ある。
初手で黒A~Kのうち、どれから打ち始めても黒の追い詰めとなる。このうち黒Gからの詰みは少々改良して上級詰め連珠として紹介した。ここではこれ以上掘り下げないが、興味のある方は研究してほしい。
条件を厳しくする
これだけでは形の研究としてはまだお粗末なので、もう少し黒の条件を厳しくしてみよう。
先の形との違いは「盤端」に近づけただけである。これだけでも以前ではA~Kと詰む点が多かったのに対し、初手がABCの三通りまで減っている。詰み筋自体は以前と変わらないので詳細は割愛する。三通りまで減ったので次はさらに条件をつけてみる。
I11に白石を付けたすことにより、ようやく詰みがこの黒1に限定された。詰み筋自体は変わらない。これ以上条件を厳しくすると詰みが消えそうなので、微調整してみる。
白石の位置をずらしただけだが、これは連を作っている。理屈で言えば制約は前よりも厳しそうだが、実はまだ詰みがある。黒1に対し、白2で詰まなそうだが・・・
黒3、黒5と決めてしまって黒7と下辺に飛び三を打つのが妙手順。対して白Aは黒BCの四追いがある。
白8を強要できることが発見できれば、あとはバリバリ引くだけである。黒15以下はABCの四追い。図から白Aは黒Dが飛び三なので無意味だ。横には狭いが縦には広いことが功を奏した。これは縦にも狭ければ詰まないことを意味している。ここまで複雑な図は実戦で出てこないかもしれないが、初型がよくある形なので覚えておいて損はない。
白の位置をもう少しいじろう。先ほどとは反対側に連を作った。一見するとほとんど変わらないように見えるが今度は受けがある。お分かりだろうか?
先ほどとは違い白には剣先が追加される。剣先は受けのバリエーションを倍増させる効果がある。黒5までゴール目前と思いきや、白6、8がぴったりで、白10までとなっては黒勝ちが潰えてしまった。下にもう少し狭ければ、白8の飛び四が打てなくなるので詰みかもしれない。
最後にTwitterに出題した図を紹介する。白石をさらに一つ追加し、今度こそ詰まなくなった。黒1に白2は一緒だが、今度はどうなっているのだろうか?
今度は黒7までに対し白8、白10が成立する。先ほどは四追いだったものを四四禁にしているわけである。今度こそ黒に詰みはない。
最後に、今回の詰み形を検証するにあたり参照した棋譜を貼り付けて終わる。このサイトからは色々な棋譜を見られるので、興味があれば楽しんでもらいたい。
http://www.renju.net/media/games.php?gameid=71190